2号文書か7号文書かを判断するために印紙税の基礎を学ぼう!

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 ビジネスパーソンのみなさん、印紙税について正しく理解していますか?

 日本の民法では、諾成契約主義(当事者双方の合意だけで成立する契約)を採用しています。そのため、口約束も法的に有効であるため守らなければなりません。 

 しかし、相手が口約束の存在を認めず、約束を守らないことがあります。そのような場合に役立つのが契約書です。契約書は契約内容により、印紙税法に定められた収入印紙を貼付する必要があります。ただ、その印紙税法を理解するのが難しく、契約書に貼付する印紙税額について迷う方も多いのではないでしょうか?

 そこで、今回は分かりにくい2号文書7号文書の区別について正しい知識を身につけていただくため、印紙税について順を追って説明していこうと思います。

印紙税の手引きを読もう

 印紙税法(リンク先は総務省のe-Govとなります)及び印紙税法別表(以下「別表」と呼ぶ)第一課税物件表(クリックでpdfファイルが開きます)では、契約書や領収書などの文書を課税対象として、1号から20号までに分類しています。その分類に応じて、私たちは自分で作成した文書が何号文書になるのかを判断し、収入印紙を貼ることになります。

 印紙税については、国税庁のホームページで確認するか、お近くの税務署へ契約書などを持ち込んで聞くのが一番正確で間違いないです。また、印紙税について一から学ぶのでしたら国税庁のホームページにある印紙税の手引を読むのが一番です。全てはここにあります。

 

非課税文書

 文書には課税文書、非課税文書、不課税文書の3種類があります。別表第一の課税物件にない文書は、不課税文書となり印紙税の対象外となります。また、別表第一の課税物件にある文書でも、次の文書は非課税文書となり印紙税の対象外となります(印紙税法第5条)。

  • 別表第一非課税物件の欄に掲げる文書
  • 国、地方公共団体又は別表第二で)非課税法人とされる者が作成した文書
  • 別表第三非課税文書とされている文書

 

請負・委任の違い

 課税文書の場合、内容から何号文書に該当するのかを判断することになりますが、その判断ができないという方が多いのではないでしょうか?

 契約には、売買・請負・委任など多くの種類があります。しかし、この区別は法律の知識がない方には少し難しいです。そこで、よく混同されがちな請負契約委任契約について、簡単ですが違いを説明しておきたいと思います。

 まずその前に、よく間違われる方がいるので、先に説明しておきますが、委託(いたく)委任(いにん)は響きこそ似ていますが別物です。

 委託(いたく)とは、人に何らかの依頼をすることを言います。そして、その依頼内容によって、請負(うけおい)委任(いにん)に分かれます。つまり、委任は委託の一種ですが同義ではありません。 

 つまり、契約書名が『業務委託契約書』では、その契約が請負なのか委任なのか判断できません。また、契約書のタイトルが『業務請負契約』であっても委任契約であったり、『業務委任契約』であっても請負契約と真逆であることすらあります。法務部のないような小さな会社ではこのような間違った契約書が作成されていることがありますので、タイトルではなく中身で判断するよう注意して下さい。

請負とは

  請負とは、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」(民法第632条)ものです。つまり、仕事の完成というゴールがある契約のことを言います。仕事の完成という表現から、建築など有形のものをイメージしやすいですが、清掃などのような無形のものも含まれます。

 この請負契約は、2号文書または7号文書に該当します。

委任とは

  委任とは、「当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」(民法第643条)ものです。つまり、請負とは違い、仕事の完成というゴールがない契約となります。

 この委任契約は、基本的に課税文書になりません。ただし、例外として7号文書に該当することがありますので注意が必要です。

 

2号文書(請負契約)

2号文書とは

 2号文書とは請負に関する契約書です。請負契約書が作成され時、記載金額がある場合は別表第一をもとに収入印紙を貼付する2号文書となり、 記載金額がなく継続するものは7号文書となります。7号文書については後述しますので、まずは2号文書について理解していきましょう。

契約金額について

 2号文書は、契約書に記載された金額により印紙税額が変わります。また、記載金額なしの場合は印紙税額は200円となります。ただし、契約金額の具体的な数字を書かなければ、必ず「記載金額なし」となり、印紙税額が200円となるというわけではありません。以下の2つの例を参考にして下さい。

 

例1:『手元の2号文書には契約金額を記載せず、契約金額が記載されている別の文書を指し示すことで契約金額を引用する場合』
 →別の文書に記載されている額が、手元の2号文書契約金額となります。そのため、「記載金額なし」で印紙税額200円とはならず、契約金額に応じた印紙を貼ることになります。

 

例2:『手元の2号文書には契約金額を記載せず、代わりに契約金額を算出する計算式が記載されている場合』
 →月額50万円で契約期間1年の場合、「50万円×1年(12ヶ月)=600万円」となり、印紙税額は1万円となります。
 →本件業務の報酬は作業員の時間単価900円に実際の稼働時間を乗じた額とする場合、報酬額を算出する計算式は文書で示されていますが、稼働時間を特定できないため、「900円×?時間=?円」となり、その契約書だけでは報酬額を算出できません。そのため、「記載金額なし」として印紙税額は200円となります。 

契約金額を変更したとき

 契約金額変更のために別途文書を作成する場合、この文書も同じ2号文書となるため、契約金額に応じた印紙を貼ることになります。ここで注意しなくてはならないことがあります。

 印紙税法では、課税文書を作成した時、その課税文書ごとに個別に扱うのが原則です。しかし、変更前の金額が記載された原契約の存在の有無、文書の記載方法で印紙税額が大きく変わります。

 また、自動更新期間中の契約金額の変更の場合は、原契約が存在していても、「原契約なし」として扱います。下記の『原契約がない場合』に該当することになりますので注意して下さい。

個別契約書の変更契約書と記載金額|印紙税目次一覧|国税庁

 

原契約がある場合

例:『平成〇年〇月〇日付業務委託契約書の報酬額を1,000万円から1,400万円に変更する場合』
 →「平成〇年〇月〇日付業務委託契約書の報酬額を1,000万円から1,400万円に変更する」と記載
増加額が400万円と分かるため、400万円が契約金額となり、印紙税額は2,000円となります。ただし、減少した場合は、「記載金額なし」として扱うため、印紙税額は200円となります。

 →「平成〇年〇月〇日付業務委託契約書の報酬額1,000万円を400万円増額する」と記載
こちらも先程と同じく、増加額が400万円と分かるため、400万円が契約金額となり、印紙税額は2,000円となります。ただし、減少した場合は、「記載金額なし」として扱うため、印紙税額は200円となります。

 →「平成〇年〇月〇日付業務委託契約書の報酬額を400万円増額する」と記載

こちらも先程と同じく、増加額が400万円と分かるため、400万円が契約金額となり、印紙税額は2,000円となります。ただし、減少した場合は、「記載金額なし」として扱うため、印紙税額は200円となります。

  →「平成〇年〇月〇日付業務委託契約書の報酬額を1,400万円に変更する」と記載
原契約が存在していても、契約金額を変更する契約書自体に変更前の報酬額の記載がない場合、増加額不明として扱われます。そのため、1,400万円まるまる契約金額とみなされ、印紙税額は2万円となります。減額の場合も同じく、減少額不明として印紙税額は2万円となります。 

原契約がない場合

例:『報酬額を1,000万円から1,400万円に変更する場合』
 →「報酬額を1,000万円から1,400万円に変更する」と記載
変更前の契約がないため、例え増額分を計算できたとしても、変更後の金額1,400万円が契約金額となるため、印紙税額は2万円となります。減少した場合も同じように扱うため、印紙税額は2万円となります。

 →「報酬額1,000万円を400万円増額する」と記載
こちらも先程と同じく、変更前の契約がないため、変更後の金額1,400万円が契約金額となり、印紙税額は2万円となります。減少した場合も同じように扱うため、印紙税額は2万円となります。

 →「報酬額を400万円増額する」と記載

 増加額が400万円としか記載がないため、400万円が契約金額となり、印紙税額は2,000円となります。減少した場合も同じように扱うため、印紙税額は2,000円となります。

 →「報酬額を1,400万円に変更する」と記載
こちらも先程と同じく、変更前の契約がないため、変更後の金額1,400万円が契約金額となり、印紙税額は2万円となります。減少した場合も同じように扱うため、印紙税額は2万円となります。

 


7号文書(継続的取引契約)

7号文書とは

 7号文書とは、継続的取引の基本となる契約書のことです。契約当事者間で何度も同じ取引をする場合に、あらかじめ取引条件を定めておく契約書のことをいいます。

 印紙税額は一律4,000円となります。

7号文書(継続的取引契約)の要件

 以下の①と②の要件を両方満たす文書が7号文書となります。

 ただし、不動産等の売買に関するもの、運送に関するもの、請負に関するものについては、それぞれ1号文書、2号文書にも該当します。その場合、記載金額のあるものは1号または2号文書となり、記載金額のないものは7号文書として扱いますので注意して下さい。 

① 以下の契約期間要件のいずれかを満たす
  • 契約期間の定めがない
  • 契約期間が3カ月を超えている
  • 契約期間にかかわらず更新の定めがある

② 印紙税法施行令第26条第1号に該当する、以下に掲げる5要件のすべてを満たす
  • 営業者の間における契約であること

  →ここで言う営業者とは、個人経営者や株式会社などの営利法人のことです。商行為に該当しない行為を業務とする医師、弁護士、農家などや、利益配当が法律で制限されている公益法人、NPO法人などは営業者にあたりません。

営業者の間における契約であることの要件|印紙税目次一覧|国税庁

  • 売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負のいずれかの取引に関する契約であること
  • 2以上の取引を継続して行うための契約であること

 →「2以上の取引」とは、契約書で決められている取引を2回以上行うことです。「1年契約で毎月お饅頭を100個売る」という契約の場合、この「お饅頭を100個売る」を「1取引」と数えます。つまり、12ヶ月で12取引することになるので、「2以上の取引」に該当することになります。

 逆に「1,200個の饅頭を売る」という契約で、毎月100個ずつ納品するという契約の場合は、「1,200個の饅頭を売る」で「1取引」として数えますので、「2以上の取引」に該当しません。

 ちなみに、契約内容で2回以上取引することが前提の契約だったが、実際は1回しか取引しなかったとしても、その契約は「2以上の取引を継続して行うための契約」となります。

2以上の取引を継続して行うための契約であることの要件|印紙税目次一覧|国税庁

  • 2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法、債務不履行の場合の損害賠償の方法又は再販売価格のうちの1以上の事項を定める契約であること
  • 電気又はガスの供給に関する契約でないこと

基本契約書と個別契約書は別々に扱われる

 基本契約書に4,000円の印紙が貼ってあっても、そこから生じた個別契約書の印紙税額は、その個別契約書ごとに判断します。つまり、基本契約書が7号文書でも、そこから生じた個別契約書が2号文書となる場合もあるということです。

 

国や地方公共団体などと締結した請負契約書

 国や地方公共団体、別表第二で掲げられている者と株式会社などが請負契約を結んで契約書を作成した場合、どちらが契約書を作成したかで印紙税の扱いが大きく変わります。

 前述してきたとおり、国や地方公共団体、別表第二で掲げられている者の作成した文書は非課税となります。しかし、株式会社などが作成した請負契約書は課税文書となるため印紙税がかかります。

 そこで問題になってくるのが、両者が共同で請負契約書を作成した場合です。国や地方公共団体などが所持する契約書は株式会社が作成したものとみなし、株式会社などが所持する契約書は国や地方公共団体などが作成したものとみなします(印紙税法第4条第5項)。

 そのため、株式会社などが所持している請負契約書は非課税文書となり、国や地方公共団体が所持している請負契約書は印紙を貼る必要のある課税文書である2号文書となります。同じ契約書を2通作成した場合、片方にだけ収入印紙を貼ることになります。

 

 会社など → 収入印紙を貼っていない契約書を所持
 国・地方公共団体 → 収入印紙を貼っている契約書を所持


 ちなみに、国や地方公共団体などは営業者にはならないので、国や地方公共団体などと継続する請負契約について定めた文書を作成しても7号文書にはならず、2号文書にしかなりません。

国等と締結した請負契約書|印紙税目次一覧|国税庁

 

あとがき

 かなりの長文となってしまいましたが、2号文書と7号文書の違いを説明するため、必要最小限度に抑えています。印紙税については、例外が多く、覚えることが沢山あると思います。しかし、ビジネスパーソンにとって契約書の作成は、避けては通れない道です。これを機に、印紙税または契約書について改めて学んでいただければ幸いです。